骨折・脱臼の後遺障害

はじめに

骨折・脱臼等の結果、機能障害(可動域制限)や神経症状、下肢短縮や長管骨の変形等の変形障害が残存した状態は、「骨折後、後遺症が残った」と言うことができます。そして、この後遺症の残存を主張して損賠賠償の対象であると認められた場合、「後遺症が後遺障害として認められた」と言うことができます。後遺症と、後遺障害。まずは言葉の意味を正確に理解することが出発点になります。

骨折・脱臼等の事案における後遺障害等級は、機能障害(可動域制限)では12級6・7号、10級10・11号、8級6・7号の6種類(上下肢それぞれに3段階)があり、神経症状では14級9号、12級13号の2種類があります。また、下肢の短縮障害では13級9号、10級8号、8級5号の3種類があり、長管骨の変形や偽関節が残存した場合には12級8号、8級9号、7級10号が認められることがあります。

骨折・脱臼等を原因とした神経症状

  • 14級9号 局部に神経症状を残すもの
  • 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

骨折・脱臼等による機能障害

  • 12級 3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
  • 10級 3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
  • 8級 3大関節中の1関節の用を廃したもの

下肢短縮障害

  • 13級9号 ・・・1下肢を1㎝以上短縮したもの
  • 10級8号 ・・・1下肢を3㎝以上短縮したもの
  • 8級5号 ・・・1下肢を5㎝以上短縮したもの

長管骨の変形障害、偽関節

  • 12級8号 長管骨に変形を残すもの
  • 8級9号 1下肢に偽関節を残すもの(大腿骨若しくは脛骨に異常可動性を有する偽関節を残すもの)
  • 7級10号 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
    (大腿骨若しくは脛骨に異常可動性を有する偽関節を残し、硬性補装具を常に必要とするもの)

後遺障害等級が認められた場合、損害賠償の項目の中に「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」という二つの項目が追加されます。逸失利益は年収その他の諸事情により個人差が生じるため画一的に解説することは出来ませんが、後遺障害慰謝料は定額ですので簡単にその違いを説明することが可能です。具体的には、14級9号の後遺障害慰謝料は110万円、12級では290万円、10級550万円、7級1000万円です(裁判基準の後遺障害慰謝料)。後遺障害が認められない、非該当の場合の後遺障害慰謝料は当然に0円ですので、より上位の後遺障害等級認定を受けることは損害賠償の解決に向けて極めて重要な要素となります。

それでは、どのような場合に後遺症は後遺障害として認められるのでしょうか。
後遺障害等級認定を受けて事故を解決するためのポイント、考え方を、以下にご紹介します。

骨折・脱臼事案の後遺障害認定

1.事故後早期に当該受傷部のレントゲン・CT検査を受けること

明らかな骨折であればまず無いことですが、骨折の中でも部位や骨折の程度が軽度の不全骨折や不顕性骨折の場合、医療機関に見過ごされてしまう事例を散見します。事故から数か月が経過した後でこれらが明らかになった場合、事故との因果関係が必ず問題になります。正確な診断内容が医療機関の記録に記載されていることは、損害賠償・後遺障害認定において極めて重要ですので、事故から早い段階での詳細な画像検査が必要になります。

2.機能障害がある場合、間違いのない可動域角度の計測を受けること

骨折・脱臼の結果、健側(怪我をしていない方)と患側(怪我をした方)の動き、可動域角度に違いが出ることがあります。これを可動域制限と言いますが、この制限の大小が後遺障害の等級に大きく関係してきます。可動域角度の計測には、日本整形外科学会が定める正しい計測方法が存在し、医療機関が診断をするにあたっては正しいルールのもと測定が行われることになっているのですが、実態は、医師・医療機関によっては、一般的な計測ルールではなく自己流で可動域角度を計測していることが多々あります。また、計測は計測器(ゴニオメーター)を使用して行うことになっているのですが、これを使用することなく目測で計測している医師もいます。1度は約1ミリで、この数ミリの違いで後遺障害等級認定の結果が変わってしまうにも拘らず、計測器も使用しない自己流の計測が行われてしまうと、後遺障害診断書に記載される可動域角度は一般的なルールから見るとおかしなものになってしまいがちですが、判定は提出された後遺障害診断書をもとに機械的に進んでしまい、「どのような方法で計測が行われたか?」までは考慮されませんので、本来であれば重度の後遺障害等級が認められるような状況であっても、正しく適正な後遺障害が認められないといった不幸な出来事は数多く発生しています。機能障害の事案では、正しい計測方法による間違いのない計測を受けることが何より重要になります。

3.痛みや機能障害の原因を明確にすること

骨折・脱臼等の結果、神経症状や機能障害等の後遺症が残存した場合、単に可動域角度の数値だけが認定基準を上回る数値・制限であったとしても、自動的に後遺障害等級が認められる訳ではいという点に注意が必要です。例えば可動域制限があるならば、そのような制限が生じていてもおかしくない医学的理由を明らかにして初めて機能障害として評価されることになります。機能障害の原因、理由としては、変形癒合(変形治癒)、遊離骨片の影響、治療の為にどうしても必要であった長期固定の結果の拘縮などが考えられますが、こうした事情を明らかにせず、単純に数値上の左右差、機能障害を訴えても、スムーズに後遺障害等級認定を受けられることはまずありません。MRI、CT、3DCT、レントゲン等の画像検査や、そこから得られる医学的所見、場合によっては専門医による医学鑑定書等を駆使して、誰が見ても分かるような客観的な証拠を提出し、後遺障害の判定を受ける意識が求められます。

4.その他、気を付けるべきこと

A.抜釘時期

大きな骨折の場合、プレート固定や髄内釘を入れて骨を固定します。そして、骨癒合が完了して骨構造が安定した後で、抜釘(プレートや髄内釘を除去すること)をすることになります。ここで問題なになるのは症状固定のタイミングです。経験上、抜釘しなければ症状固定はできないと考えられている方は非常に多いのですが、決してそのようなルールがあるわけではありませんので、そもそも抜釘をする必要があるのか、症状固定後に抜釘をした場合の治療費は誰が負担するのか、抜釘が可能な状態か、抜釘を行うことが神経症状や機能障害にどのような影響を及ぼすのか、それとも影響は無いのか、といった実質的な判断を行い、その結果、医師が症状固定と診断可能なのであれば、仮に抜釘前であっても後遺障害申請に進んでしまっても何の問題もありません。様々な選択肢の中から被害者にとって何が最も有利なのか?を医療機関と話し合う余地のある部分ですので、こうしたことでお悩みの方がいらっしゃいましたら是非一度私たちにご相談を頂きたいところです。

B.部位によっては靭帯損傷を併発している可能性がある

膝や肩などの関節付近の骨を骨折したケースでは、複合的に靭帯を損傷している可能性があります。骨折は完治したのに当該負傷部の痛みが取れない場合、骨折以外の別の原因追究をせずに後遺障害申請をすると、「骨折は治癒している」として厳しい判断が下されることになります。常に、結果の反対側に原因が存在しているという意識を忘れないようにしなければなりません。

C.大きな骨折がある場合には小さな怪我が見落とされることがある

手術が必要なほどの骨折をした場合、小程度の損傷が見落とされるケースがあります。また強い鎮静剤を使用していた場合、他の外傷部の痛みの発見が遅れます。そのまま、漫然と治療を続けた場合、受傷後数か月後に新たな部位に損傷が見つかるといったことになると、事故との因果関係の問題が生じてしまいます。

5.過不足のない後遺障害診断書が完成していること

以上のような知識を被害者様ご自身がどれだけ学習し、理解が進んだとしても、損害賠償の世界では、医師が作成した診断書の形になっていなければ何の意味も持ちません。しかし、現実には、以下のような問題が立ちはだかり、被害者側の立証活動はなかなか教科書通りには進みません。

  • 検査など必要ない、と対応を拒否される
  • 検査は実施してもらえたが、判定が厳しく全て正常所見にされてしまう

賠償医学の理論をいかに現実のものとするか。ここで、医療機関の情報をどれだけ有しているかという相談を受ける側の真の実力が問われます。もちろん、私たちは日本全国において数多くの病院情報を有しておりますので安心してご相談いただくことができます。

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